「快速!FREE NOTE Book!!」すがわらくにゆき

長い感想書かないって言ったのに早くも・・・。


えー、この本は全37作のショートショートが入っている本で、
絵柄は大体同じなんだけど一つ一つ毛色が違った内容となっている。
なので感想となると大きく全部を捉えることが出来ない。


この人の絵は線がシンプルであまり描き込まない。
そんでもって平面的ですごいディフォルメされてる。
絵の感じは違うけど、特徴だけ捉えると西島大介も同じようなところがある。


こっからちょっとネタバレになるのでいつもの如く。


他にも似たところがある。
それはパロディ精神。
この本の中の数作がパロディありきで描かれている。


「お母さん早くね。の巻」という話が秀逸だ。
プロットはこんな感じ。

病院から出てくる姉妹。
母の退院が延期したのを告げる姉。
それに対して妹、
「ミカちゃんねっなかないんだよ
 メイちゃんはないちゃうけど
 ミカちゃんつよいからなかないんだよ」
姉は話を聞くもののメイちゃんが何なのか分からない。


家に帰って家事を済ませた姉が気付く。
「あ、そーゆーコトか!」
(お母さん・・・死んじゃったらどうしよう・・・)
ポロポロと泣き出す姉。
(あたし 今 サツキだ・・・)


と、まあこんな感じで。
最近授業でとなりのトトロを心理学的に捉える、というのをやっていて
サツキが泣き出してしまうシーンを見たばっかだったので
個人的にかなり衝撃的な短編だった。


姉が
「トトロとの関連性に気付く」→「なぞる」→「想いがこみあげてくる」→「反復」
というように段階を踏んでいるところがすごい。
単なるパロディではなく、「トトロ」を現存する作品として昇華させている。


この関係は西島大介の「凹村戦争」における
さまざまな作品へのオマージュに似ている。
わざと自分の作品内に現実世界に現存する作品を置くことで
話の中で引用符としての役割を持たせるという技法だ。
シンプルで情報量が少ない絵に別の作品を引用するということは
その絵を情報を引き出す「記号」としてるんじゃないかと思う。


ここから萌えの話に発展させていこうかと思ったけど
本筋からズレるのでやめておきましょう。


ついでにこの本からパロディをもう一作。
「それ行け!レーコさん!の巻」
これは簡単な話。
漫画家志望の女の子の着ていたシャツにピョン吉が、
右手にミギーが、
左手にサイコガンが、
家に帰ると12人の妹が。
という話。
なんかもーしょーもない話。
テンポがよくて面白かった。